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超音波検査法による胎児性別判定法
?T 妊娠10−23週の症例
夏山の確立した基準(超音波による胎児性別判定法.周産期医学.11:2379,1981)を参考にして妊娠10週から23週までの胎児性別判定を行いました。
対象は当科外来において通院してきた妊娠10週から23週までの妊婦539人です。超音波検査により性別判定を行い、出産後性別を対比しました。超音波の検査は一人につき一回です。
方法はまず超音波検査により胎児縦軸全体像を作像し(図1)
その後骨盤底(臀部)を作像しました。操作により作像された像、すなわち妊娠10週より15週までは陰嚢陰茎の有無により、妊娠15,6週以後は陰嚢陰茎の有無、坐骨外陰部三角の形状により性別の判定を行いました。女児の坐骨外陰部三角はほぼ正三角形をしています(図2)
。男児のそれは鋭いくさび型二等辺三角形をしています(図3)
。
成績は妊娠9週までは胎児は超音波学的に充実性のエコー像として作像され骨盤底を作像しても性別の判定はできませんでした(図4)
。妊娠10週になると大腿骨盤底は周囲の組織より強いエコー像として作像され、また陰嚢陰茎も突起物としてみられ、これらは妊娠の経過と共に明瞭な像として作像されました。胎児の両側大腿が閉じていると陰嚢陰茎の有無は不明瞭でした。妊娠15、6週以後では図5
のように女児では外陰部の小陰唇大陰唇が2本の平行したエコー像として作像されました。
図6



は女児の妊娠11〜23週までの骨盤底のエコー像です。
図7



は男児の妊娠10〜23週までの骨盤底のエコー像です。
成績
1.妊娠各週数別における作像率(表1)
作像率は妊娠10〜16週では45〜55%前後であり、17週を過ぎると65%となり、19週以後では75〜85%と妊娠週数が増加するに従って作像率が上昇しました。
2.適中率(表2)
適中率は88.4%(298/337)でした。その内訳は男児173例中155例89.6%、女児164例中143例87.2%です。妊娠10〜15週までは男児79.5%(58/73)女児73.8%(31/42)であり、妊娠16〜23週では男児97.0%(97/100)女児91.8%(112/122)でした。
?U妊娠24週以後の症例
超音波検査により胎児性別判定法は母体および胎児に侵襲を与えずに行うことが出来ます。従来の性別判定の報告では偶然により陰嚢陰茎の出現の有無のみであり、女児の性器像の確認は困難でした。今回妊娠24週以後の症例について夏山の確立した性別判定の基準と筆者の経験を基にして一定の方法を行うことによって比較的容易に作像できる方法により性別判定を行いました。
対象は妊娠24週以後の妊婦468例です。ある一定期間において超音波検査により性別判定を行い、出産後性別を対比しました。超音波検査の回数は計1134回です。方法はプローグの当て方の基本は図8
のごとく母体の腹壁の正中に対して第一頭位では右45°、第二頭位では左45°の方向であり、骨盤位(逆子)の場合は頭位と逆です。プローグは原則として角度を変えずに図9
のごとく左右前後に移動させます。これにより骨盤底肛門会陰外陰部浅層横断像を作像します。その後図10
のごとく、この部位よりプローグを骨盤底内方および外方へ徐々に移動させます。これにより胎児の内および外性器が作像されます。
このような操作により作像された像、すなわち女児:Ftype(木の葉状)(図11)
大陰唇小陰唇(図12)
子宮(図13)
男児:Mtype(棍棒状)(図14)
陰嚢陰茎(図15)
直腸膀胱中隔(図16)
を用いて、それぞれ何れかの2つ以上の像を確認した場合をA、1つのみと確認した場合をBの2群に分けて、例えばMA、FBとするようにしました。何故なら外来で2回以上の検査で同一の結果でない場合、A群を優先して判断するためです。
成績
骨盤底浅層横断像は上下の側方は大腿部縦断像、背部は臀部横断像に囲まれた凹状のくぼみとして作像されます。この像の長さと幅の違いが男女差となってみられます。すなわち女児では短く幅広く、男児では長く幅は狭いです。これらの像は女児では木の葉状に(図11)
男児では棍棒状に(図14)
類似しており、夏山によりそれぞれFtype Mtypeと呼称されています。これらが作像された部位により、プローグを骨盤底外方に移動させると女児では大陰唇小陰唇(図12)
、男児では陰嚢陰茎(図15)
の像がそれぞれ胎児部分から遊離して作像されます。
プローグを骨盤底内方に移動させると内性器像が作像されます。すなわち女児では膀胱と直腸の間に分厚い充実性の子宮(図13)
が作像されます。男児では直腸膀胱中隔が膀胱と直腸に挟まれて2つの球を連結した8の字、あるいは雪だるま様に作像され、中隔は薄い膜のように見えます
(図16)
。
1.妊娠各週における作像率(図17)
頭位の作像率は88.0%、骨盤位の作像率は55.5であり明らかに頭位のほうが作像されやすいです。妊娠各週における作像率について、頭位では妊娠28週以後の作像率は84%以上と一定した高い値を示しております。骨盤位では妊娠28〜33週の間で作像されやすいです。
2.女児の内外性器像の作像率(図18)
Ftypeの作像率は平均91%でした。大陰唇小陰唇のそれは平均34%、子宮のそれは平均84%でした。全体として女児の内外性器の作像は妊娠29週以後容易であると言えます。
3.男児の内外性器像の作像率(図19)
Mtypeの作像率は平均91%、陰嚢陰茎のそれは平均73%、膀胱直腸中隔のそれは平均63%でした。全体として男児の内外性器の作像率は妊娠29〜35週の間が容易であると言えます。
4.適中率
初回の検査での適中率は433例中429例99.1%でした。その内訳は男児212例中208例98.1%、女児221例中221例100%でした。誤診例の4例は何れも男児で全例FBと判定し、MtypeをFtypeと誤診したものでした。誤診例はその後の再検査で初回の判定は変更されました。
以上のごとく筆者は超音波検査により胎児性別判定を北海道で初めて導入しました。今まで小児科サイドから依頼された性別に関する遺伝疾患は
1.血友病
2.ハンター症候群
3.半陰陽の家系(男児の場合)
4.尿素サイクル異常症(男児に出現)(オルニチントランスカルバミラーゼ欠陥症)
等であり、遺伝疾患に対する羊水検査の補助診断となり、小児科医から大変喜ばれ感謝されました。
こちら側から一方的に胎児の性別を知らせていません。何故ならこれは一種のプライバシーの侵害に当たると思います。しかし妊婦さんが希望されるなら今やインフォームドコンセントの時代でもあり、医療もサービス業の一面もありさらに妊婦さんのニーズに答えるという意味でもお知らせしております。希望される方はどうぞお問い合わせ下さい。
なお、日本産科婦人科学会の「先天異常の胎児診断に関する見解」において“妊娠前半期に胎児の性別を両親に告知してはならない”とありますので妊娠後半期にお知らせ致します。
文責 高階